旧ソ連時代のグルジアで生まれ、映像の魔術師と称されるアルメニア人映画監督のセルゲイ・パラジャーノフの代表作6本が4月16日(土)から4月29日(金・祝)まで新宿K’s cinemaにて上映されます。
旧ソ連の文化、ロシア文化に興味がある方には面白く鑑賞できるのではないかと思います。
セルゲイ・パラジャーノフ
Sargis Parajanyan 1924年1月9日~1990年7月20日
ソ連当時のグルジア(トルコの北方、南コーカサス山脈に位置し、現在はジョージアと呼称。ワイン発祥の地と言われている)に生まれたアルメニア人映画監督。鮮やかな色彩と様式による作風は世界映画史上、他に例がなく、死後は年ごとに評価が高まっている。1947年以後、数回に渡り投獄され、強制労働により不自由な生活を強いられながらも、監督や脚本家としてだけではなく、画家や工芸家としても素晴しい作品を残し、人々を魅了している。
コメント
パラジャーノフの創造した宇宙の底知れぬ生命力に圧倒され、いまだに眼にしたことのなかった夥しい事物たちが奏でるざわめきに魅惑されてしまうことだろう。わたしもまた彼の創造した驚異と夢幻の宇宙に心惹かれる者のひとりである。
四方田犬彦
(研究者(映画史・比較文学・漫画・記号論)/「心ときめかす」(1998年/晶文社)より抜粋)
『火の馬』
1964年製作/ウクライナ語/92分 デジタル・リマスター版
1965年マール・デル・プラタ映画祭国際映画批評家連盟賞・南十字星賞受賞他
パラジャーノフの名を世に知らしめた民族色溢れる傑作。ストーリーは反目しあう二つの家の息子と娘が愛し合いながらも引き裂かれる、山岳民族版「ロミオとジュリエット」。
兄の葬儀で父を殺されたイワンは、相手一族に憎しみを募らせる母をよそに敵方の娘マリーチカと将来を誓い合う仲に。やがてマリーチカは身ごもるが、結婚のため貧しいイワンは出稼ぎに。イワンの愛を信じ、羊を追って日々を過ごすマリーチカの身に、ある日、思いもかけない出来事が降りかかる。
『ざくろの色』
1969年/73分 デジタル・リマスター版
コーカサスの詩聖サヤト・ノヴァの悲恋の物語を絵画とパントマイムで描くパラジャーノフ珠玉の一本。王妃を愛してしまった宮廷詩人サヤトは、その想いを美しい詩と琴の演奏で伝えるが、恋は叶わず、彼は修道院に幽閉されてしまう。絶望の淵に立った彼は・・・。鮮やかな色彩、絵画のような画面構成、エキゾチックさが際立つ衣装や宗教の神秘的な世界が、世界中の映画ファンをとりこにしてやまない、パラジャーノフの代表的作品。
『スラム砦の伝説』
1984年/83分 デジタル・リマスター版
中世のおとぎ話らしく、華やかで少し残酷で不思議な世界。舞台は中世グルジア。解放奴隷のドゥルミシハンにはヴァルドーという恋人がいたが、恋は叶わず、彼は何もかも捨て、隊商となり成功する。だが、ヴァルドーは彼を忘れることができずにいた。一方、トルコ軍からの侵略防衛のために築いたスラム砦。ある女性預言者により、一人の若者が生贄に捧げられることに。だが、その若者と預言者、そしてドゥミシハン、ヴァルドーとは数奇な糸で結ばれていた・・。不当な逮捕・収監から解放されたパラジャーノフが、自身の表現にまい進した力強い作品。
『アシク・ケリブ』
1988年74分 デジタル・リマスター版
原作は世界的なロシアの詩人レールモントフによる恋物語。貧しいながらも心優しい吟遊詩人のアシク・ケリブは、大切な娘マグリとの結婚を、その父に認められるために修行の旅に出る。マグリには1000の昼と夜の後に戻ると約束して・・・。音楽、美術、演出すべてが洗練されたパラジャーノフ世界の集大成。またパラジャーノフ作品の中では検閲によるダメージのない貴重な作品。
『アンドリエーシ』
1954-1955年/61分 ブルーレイ
パラジャーノフが大学の卒業制作をさらに発展させて作った作品。勇気や魔法、自己犠牲の精神と少年の成長、美しい少女との淡い恋など、後のパラジャーノフ作品の要素が凝縮している。アンドリエーシは正義感の強い少年。笛と犬を友に、狼の出る草地で村人から預かった羊の群れの番をしていた。ある時、英雄ヴェノヴァンから勇気と独立心をほめられ、魔法の笛を贈られるが、嫉妬した悪魔が羊と犬を連れ去ってしまう。取り戻そうと悪魔を追いかけるアンドリエーシ・・・。
『石の上の花』
1962年製作/モノクロ/74分/ブルーレイ
ユーラシア大陸の中ほど、肥沃なウクライナ東部のドネツク炭鉱に、職を求めて若者たちが次々とやってきた。若いカップルが誕生し、町は希望と活気にあふれていく。そんな中、美しく無垢な女性クリスティーナは、グリーシャに心惹かれていくが、頑迷な父親に遠慮して、グリーシャを遠ざけるのだった・・・。社会主義リアリズムど真ん中の青春ドラマ。