弊社のお客様でロシア語を熱心に勉強されている林家ぼたん様が今年真打に昇進されました。
過日真打昇進披露公演に行ってまいりました。(恥ずかしながら落語初鑑賞です)林家ぼたん1

ぼたん様が当初ロシア語を勉強したいと思われたきっかけは、 フィギュアスケーターのプルシェンコが好きなので、ロシア語のサイトが読めるようになるため、ロシア語のインタビューを聴き取れるようになるためとのことでした。

公演でいよいよ主役であるぼたん様の出番になりました。
こちらの方が緊張maxで、『がんばれー』と心の中で叫んでいました。
冒頭で『趣味はフィギュアスケート鑑賞なんです』というお話があった時には、まさかそのお話が出るとは想定していなかったので、思わず『プルシェンコ!』と叫びそうになりました。
実際、ファンの方からの公演祝いの品でフィギュアスケート靴が舞台脇に置かれており、かなりの存在感を放っていました。

botan-2流れるような口調で堂々と落語を披露されるお姿は頼もしく、僭越ながらさすが真打になる方だなと感じました。
話の中で演じる子供の声に独特のかわいらしさとお茶目さがあり、場面の臨場感が増していることに気づきました。
これは男性の落語家様にはできない、ぼたん様特有のオリジナリティでした。
もちろん男性落語家様は力強さや図太さを表現するのに長けていますが、女性落語家様は対照的に柔らかさとしなやかさがありますね。
聞いていて心地がいいです。

botan-3そして、 7月7日18:00からサンクトペテルブルクの日露友好会館で落語をされます!
ロシアでの落語の普及や日露交流のかけ橋としてもその歩みを進めていらっしゃるようです。
多くのロシア人の方も見に来てくれるといいですね。

ロシア語は世界の言語の中でも最も難しい言語のひとつと言われていることもあり、壁に当たって早い段階で学習を止めてしまう方も少なくありません。
ましてやぼたん様は独特の言い回しの日本語を使う落語家という仕事をされながらのロシア語学習でさぞかし大変であることは想像に難くありません。
そのような中既に2年以上継続して学習できているのは、ロシア語を楽しんで学習されているのもあるでしょうが、男性中心社会の落語界でのご苦労で培われた忍耐力もあるように感じました。
実際、公演の中で先輩落語家の方が、ご入門されてからぼたん様が公私に渡り献身的に師匠のお世話をされていた旨をおっしゃっていました。
そういったご苦労があって真打林家ぼたんが誕生したのですね。
今後のご活躍を切に願うとともに、応援してまいりたいと思います。
皆様もぜひ林家ぼたん様の落語をご覧になってください。
特に女性の方は何か刺激を得られると思います。
出演予定は以下のブログに詳しく記載されています。
落語家「林家ぼたん」のブログ

さて、言わずもがな落語は日本の伝統芸能です。
一人で舞台に立って話をして観客を笑わせる芸能は日本だけではありません。
ロシアをはじめほとんどの国ではアメリカのスタンドアップコメディのようなものが主流のようです。
しかし、落語のユニークさは一線を画していて、誰が見てもこれは日本の伝統芸能だという和のアイデンティティがあります。
服装や座布団、舞台演出といった見た目の部分以外のユニークさは、個人的には座って話をすることと、笑わせ方かなと感じます。
スタンドアップコメディと言うくらいですから、海外ではコメディアンは立って、動いて、時には観客に話を振ったりしてパフォーマンスするのが一般的です。
落語は座って話をすることで派手さはないが、それが故に落ち着いて鑑賞することができます。
座ることで自分の逃げ場を断ち、勇気を持って真剣勝負をするイメージがあります。
侍のような潔さでしょうか。

また笑わせ方についてですが、落語は多くのジョークを発して腹抱えて笑わせるというよりも、想像力をかき立てるような話をしてオチで”なるほど”という笑いを生む感じがしました。
そこには日本人の見掛けで判断できない奥深さ(時に外国人に理解されない部分)が表れているのではないでしょうか。

日本の伝統工芸や伝統芸能は時代の流れと共に廃れている分野があることは事実です。
ただ、需要が少ないという理由だけで文化を廃れさせていいのでしょうか。
海外にどんどん発信して外国人の興味を引くというのも重要な要素ですが、日本人としてできることは、それほど興味はないけれども敢えて行ってみる、体験してみる、買ってみるというのことなのかなと思います。
それによって興味が湧くことや新発見は多々あるはずです。

そういった意味でも、女性の落語家である林家ぼたん様が活躍することは、落語ファン層の拡大や女性落語家を目指す方が増える可能性を秘めているので、落語界の発展には欠かせないような気がします。